北海道牧場紀行

ノーザンファーム編?Ｐａｒｔ??

　ノーザンファームイヤリングの放牧地に入ったとき、警戒心もなくこちらに近寄ってきた当歳馬がいた。 「その馬がキョウエイマーチの07（牡、父ネオユニヴァース、５月８日生まれ）ですよ」と案内してくれたスタッフが教えてくれた。
　ここまで人なつっこいのは、生まれたころからさまざまな人に接してきたことや、会う人すべてにかわいがられてきたこと。そしてイヤリング厩舎にやってきてから、あまり時間が経っていないこともあり、ほかの馬といるよりも、人の側にいることの方が楽しいからかもしれない。
　キョウエイマーチの07は、生まれてすぐに母を亡くしている。母のキョウエイマーチは桜花賞でメジロドーベルの追撃を振り切って逃げ切るなど、重賞５勝の成績を残している。
　繁殖入りしてからは、まだ目立った活躍馬こそ送り出していないものの、必ずやあの卓越したスピード能力を受け継いだ産駒が現れてくると期待されていた。それだけにまだ13歳という年齢で亡くなってしまったことは非常に残念だ。
　母の愛情を感じ取れたのはわずかな時間ではあったが、その分キョウエイマーチの07は、人からの愛情をたっぷり注がれた。集団と一緒にいると思っても、いつの間にか自分やスタッフのところに来て、「ねえ、遊んでよ」とばかりに付いてくる。つぶらな瞳もとても愛らしい。 　「ここにいるすべての馬に活躍してほしいというのはもちろんですが、その中でもキョウエイマーチの07にはいい成績を残してほしいと思いますね」とスタッフは話す。 　５月生まれにもかかわらず、自分より早生まれの馬たちを凌駕（りょうが）するような馬体は見るからに立派であり、一歩一歩の動きにも力強さが見てとれる。 　これだけの馬体に産んでくれたことが、母から授かった最大の愛情だと言えるだろう。　

2007年12月01日