馬三郎25時

もし、“そうですね”と言っていたら…

　もしかしたら、この世に出現しなかったかもしれない。９日に北海道の鳥井牧場で、ディープインパク
ト産駒第１号が無事に誕生した。額に「く」の字のような流星が入った牝馬。父は圧倒的な強さで、競馬
という枠を飛び越えて、日本中に旋風を巻き起こした。当然、今後も高い注目を集めるだろう。
　母ロングディライトは中央未出走。デビューを目前にした函館競馬場で追い切り時に骨折した。診療所
で診察の結果、安楽死の処分が取られそうになったが、管理していた沖師が「やるだけやってほしい」と
説得。鳥井牧場とは親交が深く、ロングディライトの兄弟２頭も管理していた。「何とか牧場に返したい
」。故障した部分にギプスをして治療に努め、２カ月が経過。デビューはできなかったが、繁殖牝馬とし
て牧場に戻ることができた。
　そんな縁があって、ディープ産駒第１号を管理することになる沖師。牧場へ出向いて、対面も済ませた
。「生まれたばかりにしては、しっかりしていた」と印象を語った。「ウチは代々かかわる牝系がある。
まあ、オーナーがいてこそですけど」。ディープ初子の異父兄ロングディライトの０６（父ダンスインザ
ダーク）、異父姉ロングディライトの０７（父スペシャルウィーク）も入厩予定だ。
　管理する立場として重圧もあるだろうが、「いろいろなことが話題になって、競馬が盛り上がるのはい
いと思う」と笑顔を浮かべた。早ければ２０１０年夏にもデビューする。「もし、あの時に“そうですね
”と言っていたら…」。血の織りなすドラマも競馬のひとつ。どういう活躍をするか、今から楽しみにし
ている。（関西デイリー・中江　寿）

2008年01月29日