馬三郎25時

竹村浩行

メダボ解消の道のりは険しい

　トレセン関係者でサッカーをしている人は結構多い。同好会やサークルと称して複数チームがあり、たびたび試合をしているほどだ。練習も週に１?２度は必ず行うというハード調教である。メタボまっしぐらの私にはとてもついていけそうにないが、同年代の厩務員から「最近、腹出てきてるやないか？　どや？うちのサッカーチームに入らへんか？」と言われたことがあった。失礼だが、その厩務員はどう見てもスポーツマン体型ではない。ウエストはポヨンポヨンで無精ひげでたばこをくゆらせている。もっぱら彼とはパチスロの話で盛り上がっていただけに、サッカーをやっていると聞いたときは尊敬の念を抱いた。
　そして、以前から、メタボ解消の道を共に歩める友人を探していたので、（彼はうってつけのパートナーかも…）と感じた。「週明けにミニ試合をするから見に来いよ」と言われ、「暇だったら行きますよ」とあいまいな返事をしたが、心の中では「行く」と決めていた。
そして週明け?。
　いきなり参加するわけにもいかないので、フェンス越しにグランドをのぞいて見ることに。すると、ミニ試合どころか、十数人が所狭しと駆け回っているではないか。若手ジョッキーや若い調教助手などは全速力にもかかわらず笑顔だ。そして何よりうまいのだ。私がこの中に入れば１分ほどでギブアップしてしまいそうだ。
　だが、ここで諦めるわけにはいかない。彼はどこだ？必ずこの中でボールを追いかけているはず。目を懲らして探すが、見当たらない。ふとボールから目をそらした時、彼を見つけた。どこか物足りない表情を浮かべてタバコをふかし、ゴールにもたれかかかっている。手には厚手の手袋をはめていた。そう、彼はゴールキーパーだったのだ。そして、タバコを吸い終わったあと「よし、来い！」みないなポーズを決めた。そこで心が折れたのは言うまでもないだろう。
　友人と一緒に楽しく痩せようなんて、甘い考えなのは初めから分かっていた。しかし、彼のポジションだけは最初に聞いておくべきだったなあ…。メタボ解消の道のりは……険しいです。
（栗東時計班・竹村浩行）

2008年06月01日