馬三郎25時

石渡重伸

友とのきずなを胸にデビューを目指す平野騎手候補生

　先日、北馬場の調教スタンドの階段を登っていると「おはようございま?す」と元気な声が聞こえてきた。声の主は、来年の３月にデビュー予定の平野優騎手候補生だった。調教中にケガをしてしまい、この日はスタンドから調教を見学するとのこと。何かネタを提供してもらおうと聞いてみると、ハキハキとした声でいろいろ答えてくれた。

　「中２の時に仲の良かった友達が乗馬を始めたので、その影響から僕もやることにしたんです。その後、一緒にＪＲＡの競馬学校の試験を受けたんですが、僕は奇跡的に合格して友達は不合格になってしまったんです」といきさつを教えてくれた。そして、そこからの話が泣けた。

　「その友達は翌年も合格することはできず、騎手になる夢をあきらめかけていたけど、今年、地方の騎手試験に合格したんですよ。その時は自分のことのようにうれしかったですね。今の夢はその友達、仲野と同じレースで腕を競うことです」と満面の笑みを浮かべながら話してくれた。

　夢を語ることに恥じらいすら感じる年になったオヤジにはとても新鮮に感じられ、心の底から応援してあげたいと思った。いつになるかは分からないが、同じ馬柱に『平野』『仲野』という名前が掲載されることを心待ちにしている。夢があるっていいもんだなぁ。

（美浦時計班・石渡重伸）

2008年09月05日