馬三郎25時

文元仁

ユキチャンは勝利の女神

　まるで地獄絵図を見ているかのようだった。馬券を買えども買えども紙くずと化す恐怖。単勝を買えば?着、馬連を買えば相手が総抜けというお決まりのパターン。レースが終わっても出てくるのはため息ばかり。今年の初頭、筆者は負のスパイラルへと完全に足を踏み入れていた。

　後藤調教師は担当になってから、まだ数カ月と日の浅い当方にも親切に対応してくれる優しいトレーナー。ある日、いつも通り後藤厩舎へうかがうと、師の机の上には白い毛が散乱していた。「ユキチャンのたてがみを切ったんだ。お守りの中にでも入れたらいいかもしれないね」と話しながら後藤師はユキチャンの毛を１本手渡してくれた。

　残念ながら、あまり信心深くないタチなのでお守りなど持っておらず（馬券がサッパリ当たらなくなったのは天罰か）、とりあえずは財布の中へ入れることに。そこからは何かつき物がとれたかのように、馬券が的中し始めた。

　今でも当初の勢いこそないものの、一時のスランプからは完全に脱却したと見える。ユキチャンにとっては迷惑かもしれないが、今後も勝利の女神であってほしい。

（美浦想定班・文元　仁）

2009年04月29日