馬三郎25時

安川時男

『メーロー』の威力にほんろう

　ビュービューと吹きまくる風の音と、バリバリと窓ガラスを叩く雨音に目を覚ましたのが、木曜の午前３時だった。

　折からの台風18号『メーロー』の威力は美浦村にも及んだ。調教開始までまだ３時間もあろうというのに、目がさえて表のごう音を聞きながら時間を費やすしかなかった。

　午前５時になると周りが静かになり、雨風がピタリとやんだ様子。トレセンに向かうのは今しかない、と自転車を激しくこいだことが吉と出た。調教スタンドに着いた途端に再び嵐がやってきたのである。

　調教時間を午後１時まで繰り下げたことで、各厩舎の思惑はまちまち。レインコートにツバ広のハットで固めた藤沢和師は、周りの記者に「ごくろうさん」と声をかけながら、朝イチから精力的に動いていた。またある厩舎は昼近くから運動を始めると聞いた。

　記者は雨が上がった一瞬をとらえて厩舎に足を運び取材。風にはあおられたが、何とか濡れねずみにはならずに済んだ。

　普段は暑いのは嫌だ、寒いのは嫌だ、雨は嫌だと呪いの言葉を吐きながら取材に走る我が身だが、台風よりはマシ。今は平穏であることに幸せを感じている。

（美浦想定班・安川時男）

2009年10月08日