馬三郎25時

?動物の命?を問う人気漫画

　荒川弘による人気漫画「銀の匙　Ｓｉｌｖｅｒ　Ｓｐｏｏｎ」をご存じだろうか。現在、週刊少年サンデーにて連載中。すでにアニメ化されており、来春には実写映画として公開を予定しているという。

　著者の代表作「鋼の錬金術師」とは打って変わって、今作は農業高校を舞台にした青春グラフィティ。ざっくりと言えば、全く普通のサラリーマン家庭で育った主人公が、農業生活や友人との関わりを通じて成長していくストーリーだ。

　笑いあり、恋愛要素あり、絵柄のイメージも手伝って全体のノリは軽いのだが、作品の根幹にあるのは「動物の命」という重いテーマ。著者は農業高校出身らしく、エピソードのディテールはどれもリアルだ。劇中、不意に発せられた「経済動物」という言葉にはドキッとさせられる。

　経済動物の代表として、帯広のばんえい馬も登場。激走の裏で厩務員が馬に対して抱く思い、獣医師のセリフは、競馬に関わる者として改めて考えさせられるものばかりだ。

　主人公が安易な動物愛護に走るわけでもなく、仕方ないものとして諦めるでもなく、人間としての原罪に真っ向から答えを求め、自分なりの着地点を見つけるシーンはなかなかに泣ける。ぜひ一読を。

（関西デイリー・長崎弘典）

2013年11月12日